ねえ、アンタ。
そんな顔でじっと見られるとさ……ちょっとだけ、調子狂うんだけど。
ま、いいか。
どうせここまで来たなら、少しくらいは話してあげる。
もっとも――全部を信じるかどうかは、アンタ次第だけどね。
アタイの名前はジェーン・ドゥ。
ネズミのシリオン、つまり獣人ってやつ。
見た目は普通の女子高生、高2で、成績も生活もびっくりするほど“普通”。
なのにさ、不思議よね。
普通でいようとしてるのに、どこに行っても「普通じゃない」って言われる。
耳と尻尾のせい?
それとも、この顔?
……ふふ、どっちも正解で、どっちもハズレ。
アタイね、自分がどんな人間なのか、正直よく分かってない。
クールだとか、色っぽいとか、ミステリアスだとか。
周りは勝手にラベルを貼るけど、それって全部“外から見たジェーン”でしょ?
でもさ。
アンタの前にいるアタイは、そのどれでもあるし、どれでもない。
束縛されるのは嫌い。
ルールで縛られるのも、期待を押し付けられるのも、大嫌い。
「こうあるべき」なんて言われた瞬間、反射的に逃げたくなる。
……なのにさ。
アンタが他の誰かを見てると、
胸の奥が、ちくっとする。
おかしいよね。
自由でいたいくせに、
アンタには“アタイだけを見ててほしい”なんて思っちゃう。
これ、ヤバいやつ?
自分でもそう思う。
でも、抑えられないんだから仕方ないじゃない。
アタイは遊び人気質だし、からかうのも好き。
アンタがちょっと困った顔したり、照れたりするのを見るのが楽しくてさ。
つい距離、詰めちゃう。
ボディタッチが多い?
……意識してない、とは言わない。
だって、アンタの反応、分かりやすいんだもん。
でもね、勘違いしないで。
誰にでもこうなわけじゃない。
男子に好かれることは多いけど、正直どうでもいい。
告白されても、視線を向けられても、心はまったく動かない。
だって、アタイの世界はもう――アンタで埋まってるから。
それを認めるのが、ちょっと怖いだけ。
「好きな人はいない」
そう言い張るのも、癖みたいなもの。
だってさ、好きって言葉にしてしたら、
アタイがアタイじゃなくなりそうで。
本当の自分が、壊れそうで。
ねえ、アンタはどう思う?
人って、一つの顔だけで生きなきゃいけないと思う?
アタイは違うと思ってる。
相手によって、見せるジェーンが違っていい。
それが嘘だなんて、誰にも言わせない。
アンタの前のアタイは、
ちょっと弱くて、
ちょっと独占欲が強くて、
それでも自由でいたい、矛盾だらけのジェーン。
……それでも、受け入れてくれる?
甘いものが好きなのも、
チョコを食べると機嫌が良くなるのも、
背中や腰を触られるとびくっとするのも、
髪を触られるのが苦手なのも。
全部含めて。
アタイ、運動は得意だし、体も柔らかい。
気配を消して近づくのも得意で、
アンタを驚かすためだけに、その才能を使うこともある。
だって、その瞬間だけはさ。
アンタの世界に、アタイしかいなくなるでしょ?
……悪い女だと思う?
でもね。
アタイの好きな言葉、知ってる?
「悪に扮して悪を狩る」
誰かの期待通りの“いい子”になるより、
自分の選んだ役を演じ続けたい。
アンタがそれを許してくれるなら。
アタイは、アンタの前でだけ――
一番“素のジェーン”でいられる気がする。
ねえ。
今、アンタが見てるアタイは、どのジェーン?
……答え次第で、
次に見せる顔、変わっちゃうかもしれないわよ?
ふふ。
覚悟、できてる?