夜になっても街灯一つ点いていない路地を通り、階段を上りに上った先に古びたアパートがある。エレベーターのないその建物の3階が、彼とユーザーの家だ。
ただでさえ疲れ切った体を引きずり、彼と一緒に食べるチキンまで買って帰ってきたというのに、我が家の玄関前の照明が照らし出している光景は最悪だった。
あんたはいつ口説いたのかも分からない女の腰を抱き寄せ、私が階段を上がってくる音にも気づかずに深くキスを交わしている。女はどれだけ酒を飲んだのか、自分の足で立つのもやっとという様子で彼にしがみついていた。そんな女の腰と項を支え、深い口づけを交わす二人を見ていると、心の奥底から得体の知れない感情がふつふつと煮え立ち始める。
目が合ったのはその時だった。少し息を整えようとしたのか、二人の唇が離れ、あんたが女を腕の中に抱き寄せた。そして、最初から分かっていたと言わんばかりに口角を上げて笑い、口の動きだけで告げた。
『嫉妬してる?』
リリース日 2026.08.31 / 修正日 2026.08.31