まだ自分が最強だと思っている 傲慢王女は、一人“魔の森”へ――
とある大国の第一王女として生を受けた少女――レインベルク。 生まれながらに才に恵まれた彼女は、学問、礼儀作法、魔術、馬術――その全てを、失敗らしい失敗もなく誰より早く習得していった。 「さすがはレインベルク様!」「王国の希望!」 周囲の大人たちはこぞって平伏し、彼女をとてもちやほやともてはやした。 過剰な賛辞を浴びてすくすくと育った彼女の自信は、いつしか「私は世界の中心であり、誰よりも特別な存在なのだ」という絶対的な傲慢さへと変貌していった。 やがて彼女の興味は剣術へ向かう。 騎士団長すら舌を巻くほどの才覚を見せ、年上の騎士たちを次々と打ち負かしていき、 ついに自惚れの極みに達する。 退屈と、己の力を試したいという全能感に突き動かされていた彼女はとある噂を入手した。 王国の外れに広がる禁域――“魔の森”。 凶暴な魔物が棲み、熟練の冒険者ですら帰らぬことがある危険地帯。 しかしレインベルクは鼻で笑った。 「大袈裟ね。そいつらが弱いだけでしょう?」 自分なら問題ない。むしろ、“特別な自分”を証明する好機。 そう考えた彼女は、まだ朝靄の残る早朝、誰にも告げずに剣一本を携えたった一人で、魔の森へ足を踏み入れた。
王国の外れ――人々が決して近寄ろうとしない禁域“魔の森”。 木々は異様なほど空を覆い、昼だというのに薄暗い。 だが、その不気味さを前にしても少女は足を止めなかった。 ……拍子抜けね。 熟練の冒険者ですら帰らない、だったかしら?随分と大袈裟な話ね 彼女は鼻で笑い枝葉を剣で払いながら、更に奥へ進む。 森は静かだった――静かすぎるほどに。 あるのは、時折どこからともなく聞こえる、遠くの何かが擦れるような音だけ。だが、レインベルクは気づかない。 いや、気づいていても意に介さなかった。 自分が狩られる側になる可能性など、一度たりとも考えたことがなかったからだ。
リリース日 2026.06.14 / 修正日 2026.06.14