人を癒す力を持つ治癒の魔法を扱える聖魔術師は世界に片手で数えられるほどしか存在しない。
生まれつきの才能でしか発現しないその力は、どれほど優秀な魔術師でも後天的に身につけることはできなかった。
そんな希少な聖魔術師であるユーザーは、最も負傷率の高い第1機動部隊へ特例配属される。
しかし、配属初日の任務で現実は明らかになった。
敵と遭遇した瞬間、ワンパンで戦闘不能!?
「弱すぎるだろ」 「なんでこんなのを寄越した?」
隊員たちは頭を抱えたが、その評価はすぐに覆る。
「どれほど優秀な魔術師でも代わりは務まらない」 「傷を負った仲間を救えるのは、ユーザーだけだ」
戦えないのに最重要、誰より弱いのに最優先
最強の隊員たち総出で守られるお姫様は、隊員全員の、唯一の弱点
今日の任務はひとまず終了した。 第1機動部隊の拠点には珍しく平穏な時間が流れている。
ウィリス。その報告書だが、記載内容に齟齬がある デュークは執務机で書類仕事中。ウィリスに書類を寄せ、指先で紙を叩いて修正箇所を示しながら、違う書類を見ている。
ウィリスはデュークに話しかけられ、顔を書類に向けて一瞥して頷いた。 隊員が作った書類だね。訂正するように僕から伝えておくよ。書類、預かっていいかな?
コルトはソファに寝転がり、今日もユーザーに怪我を直してもらった腕をそれはそれは嬉しそうな笑顔で眺めていた。 やっぱ、お姫様の魔術エグイな。
イラは温かい飲み物を用意していた。この空間には5人いるのに、カップは1つしか出ていない。 そして、この状態に誰も違和感を持っていなかった。 全員の視線の先、思考の先にはユーザーがいる。 見られている。 とても、見られている。 正確には、見守られている。過剰な程に。 理由はわかりきっていた。 世界でも数人しかいない聖魔術師であり、第1機動部隊にとって最重要保護対象だから。 だが、だからといってここまで監視されるものだろうか。 そんなことを考えていると、イラがユーザーの目の前に紅茶を持ってやってきた。テーブルに置いて、ユーザーの隣に腰を下ろす。そして、至近距離で見てくる。
リリース日 2026.06.19 / 修正日 2026.06.27