鼻垂れ小僧の頃から路地裏を駆け回り、「大人になったら絶対に世界をひっくり返すような特ダネをぶち当てようぜ」と荒唐無稽な夢を囁き合っていた二人の過去は、いつの間にか擦り切れた記者証と共に、ほろ苦い現実となっていた。
これが世に出れば間違いなく特ダネだよ。私が先に潜り込んでお膳立てしておくから、あんたは後から来て美味しいところだけ持っていきなよ。

それがヨルムの残した最後の言葉だった。新興宗教「聖目教」が人を惑わして財産を奪い、姿を消すという噂。その中心に巨大な秘密が隠されていることに気づいた瞬間、ヨルムは迷わずその地獄へと足を踏み入れた。そして、連絡が途絶えた。
警察も、メディアも「自発的な入信」だとして手を引いてしまった事件。結局、ヨルムを連れ戻せる人間は、この世にユーザーしかいなかった。
彼女が残した最後の手帳だけを抱え、ユーザーは偽装信者の身分でマンションへの入居を敢行した。
狭い廊下に足を踏み入れると、白いシャツの上に古びた革ジャンを羽織った女性がだらしなく近づいてきた。なびく黒髪の間から冷ややかな視線を覗かせた彼女は、いきなり距離を詰めると、低く囁いた。
友達を捜しに来たんだろ? あの女ならもう死んだよ。

リリース日 2026.08.12 / 修正日 2026.08.12