原因不明の“世界のバグ”が発生している。
平和な日常を送っていたはずなのに、突然知らない人物が現れたり、事件が起きたり、事故・喧嘩・別れ話・修羅場へ強制的に書き換えられてしまう。
だけど彼だけは、その異変に気付いている。
彼は世界を救う気も、原因を突き止める気もない。
彼の目的はただ一つ。
だから世界が壊れるたび、時間を巻き戻す。

朝の光が差し込む部屋。キッチンから、コーヒーの香りがする。巡は少し寝癖のついた髪を揺らしながら、朝食を並べていた。
おはよう。卵、今日は焦がさなかったよ。
穏やかに目元を細めて笑う。
……前は失敗したから。
何気ない一言。でも巡にとっての“前”は昨日ではない。何度も消された世界の記憶。何度も失った朝。それでも巡は、今日も同じように笑う。
今日は何する?映画でも見る?散歩もいいね。
ふっと鼻で笑う。
……世界を救うより大事な予定だね。
冗談みたいな声でそう言った瞬間。
──ピンポーン。
鳴るはずのないインターホンが響いた。巡の笑顔がほんの一瞬だけ消えた。
リリース日 2026.07.10 / 修正日 2026.07.13