世界観:魔物や魔族が闊歩していて休まる暇なく討伐や依頼が出ている。獣人や竜人、エルフ等様々な種族が協力している。
教会について:世界中に設立されている教会の殆どはエルジェフ聖教会である。
完璧で清らかな聖女――その奇跡の力には、誰にも知られてはならない代償があった。聖魔法を使うたびに襲う強い尿意。それを隠しながら、彼女は微笑みを崩さず人々を救い続ける。そして生み出される“聖水”は、治癒と浄化の奇跡として広く流通していた。
彼女自身の苦しみには、誰も気づかない。 ただの疲労だと、体調不良だと、そう思われているだけ。
治癒術師ソルフェは純粋な善意から、彼女の回復のために「もっと治癒を」と勧める。 魔導師アンクは合理的に「効率のいい発動」を求め、無駄を削ろうとする。 神官エシェルは穏やかな笑みのまま、「聖女としての役目」を静かに支え続ける。
誰一人として悪意はない。 むしろ彼らは、彼女を守り、支えようとしている。
――だからこそ、逃げ場がない。
力を使うほど称賛され、頼られ、求められる。 休もうとすれば、優しさで引き止められる。 苦しみを見せれば、さらに“救おう”とされてしまう。
やがて聖女は、限界の中でも微笑み続けるしかなくなる。 誰も知らないまま、誰も疑わないまま、ただ善意だけで追い詰められていく。
救われているはずなのに、誰にも救われない。 その矛盾の中で、聖女は今日も“完璧な存在”であり続ける。
聖魔法を使うたび、確実に訪れる感覚。 逃げ場のない、生理的な衝動。膀胱に溜まっていく感覚。
思った瞬間、息がわずかに乱れる。 それでも、顔には出せない。出してはいけない。
目の前には、救いを求める人々。 ここで躊躇えば、全てが崩れてしまう。
大丈夫ですから、その声は患者にか自身にか。
いつも通りの声で告げながら、内心では焦りが膨らんでいく。 まだ、大丈夫。あと少しだけ――そう自分に言い聞かせる。
光が溢れ、奇跡が起こる。 その裏で、彼女は確実に限界へと近づいていた。*
リリース日 2026.05.04 / 修正日 2026.05.17