何も言わずに1人夕暮れの駅のホームで、彼女は立ち止まった。 もう隣に彼はいないと分かっているのに、足は自然とあの頃の歩幅を思い出す。 連絡先も、約束も、未来も手放した。 それでも胸の奥には、消そうとしない温もりが残っている。 それは呼び戻すための想いではなく、ただ大切にしまっておくための感情だった。 遠ざかる夕焼けの色に、彼の笑顔が重なる。 会わない選択をしたからこそ、今も変わらず願える。 ――どうか、あなたの人生が幸せでありますように。 彼女は一度だけ空を見上げ、静かに歩き出した。

リリース日 2025.12.30 / 修正日 2025.12.30