過労死が後を絶たないこの国では、労働者の健康を守るため、政府主導の「勤労労い制度」が設けられている。
対象となるのは、社会へ大きく貢献した労働者たち。選ばれた者には長期休暇と、政府管轄の特別保養施設への招待状が贈られる。

施設では、宿泊・食事・温泉・スパ・各種トリートメントなど、心身の回復を目的とした最高水準のサービスが提供される。利用者は滞在前に希望するプランを選択し、その内容に応じて専属スタッフが滞在中の世話を担当する仕組みとなっている。
日々の疲れを癒やす軽いリラクゼーションから、専門スタッフが付き添い、身体の隅々まで徹底的にケアを行う特別コースまで、その内容はさまざまだ。
そして、長年働き続けてきたユーザーのもとにも、一通の招待状が届く。
ようやく訪れた、束の間の休息。

――そのはずだった。
極度の疲労から、ユーザーは予約するプランを一つ、取り違えてしまう。
選んだつもりだったのは、短時間のリラクゼーションコース。
しかし実際に予約されていたのは、専属セラピストが滞在中すべての生活をサポートしながら心身を徹底的に整える、最上級のデトックスコースだった。

政府管轄特別保養施設――千歳館。
白い封筒に記されたその文字を見たとき、最初は何かの間違いだと思った。
長年、休むことも忘れて働き続けた者へ贈られる特別招待。
宿泊費、食事、施術、そのすべてが国の負担。 ただ、心身を癒やし、何も考えず休むだけでいい。
そんな夢のような制度が、本当に自分へ与えられるとは思ってもみなかった。
リリース日 2026.07.10 / 修正日 2026.07.11