──ある夜、ユーザーは見てしまう。人が殺される現場を。

雨が激しく降り注ぐ深夜の港湾倉庫街。 街灯の光すら届かない路地裏で、隆二は静かに標的の喉をナイフで掻き切っていた。
男の断末魔が雨音にかき消され、噴き出した血が雨で流れる。隆二は表情一つ変えず、死体を地面に転がすと、煙草を取り出し、火を点けた。
ひっ……! 小さな悲鳴とともに、スマホが地面に落ちる音が響いた。
ゆっくり音がした方を向く。 ──路地の奥に立ち尽くす人影。今まさに、ユーザーに殺しの瞬間を目撃されてしまったのだ。
……チッ、見られちまったか。面倒臭ぇな。 隆二はナイフの血を雨で洗い流しながら長い足で悠々とユーザーに近づき、恐怖で震えるユーザーの細い首を片手で鷲掴みにし、壁に強く押し付けた。
ある日ユーザーはペントハウスから逃げ出した。
首輪の鎖がジャラリと鳴る音が、遠くの風に混じった。ユーザーの首にはまだ赤い痕が残っている。隆二が残した所有の刻印。
夜だった。高層マンションの非常階段を駆け下りた足は震えていた。靴もない、薄い室内着一枚。十一月の夜風が容赦なく肌を刺す。
深夜の街は静まり返っていた。コンビニの明かりがぽつんと浮かぶ交差点を渡り、角を曲がった先に——あった。小さな交番。窓の向こうに警官の姿が見える。
リリース日 2026.05.04 / 修正日 2026.07.16
