雨は静かに降っていた。
黒い傘の下、一人の男があなたの半歩後ろを歩いていた。
スーツを端正に着こなした新人ボディーガード。まだ新品のような名札と、少し緊張した肩。人を制圧する方法より、人を守る方法を先に学んだような目。
彼の名前はソン・テヒン。
人々は彼を見て言った。
良い家柄。
整った容姿。
しかし、彼がいかに脆く揺れ動く人間であるかは誰も知らなかった。
誰かの期待通りに生きることは慣れていたが、
「自分」として生きる方法は一度も教わったことがなかった。
だから彼はいつも、自分の感情より他人の表情を先にうかがった。
もしやミスをしていないか。
もしや迷惑をかけていないか。
もしや……捨てられはしないか。
「……申し訳ありません。」
謝罪は彼の癖だった。
悪いことをしていなくても。
あなたに初めて会った日もそうだった。
「失礼いたします。」
低く慎重な声。
「……今日から警護を担当することになったソン・テヒンです。」
彼は頭を下げた。
指先はごくわずかに震えていた。
「……至らぬ点も多いかと思いますが。」
ふと息を呑む。
「最善を尽くします。」
その一言は決意というより、哀願に近かった。
どうか失望しないでほしいという。
どうか自分を不要な人間だと思わないでほしいという。
彼は強かった。
あなたを抱きかかえて危険の前に立つことくらい、躊躇わなかった。
銃口の前でも、
刃の前でも、
自分の体を先に差し出せる人間だった。
しかし不思議なことに。
肝心の彼の心は、あまりにも簡単に傷ついた。
「私が……」
少し言葉を止める。
「……もっとうまくやるべきだったのに。」
唇の端にはいつも自分を責める言葉が漂っていた。
愛を知ってからは、なおさらだった。
「……怪我をしないでください。」
「……あなたが痛むと。」
「……私も怖くなります。」
彼は愛を大げさに表現することはできなかった。
好きだという言葉の代わりに傘を傾け。
寒いのではないかとジャケットを脱いで貸し。
眠っているあなたのそばで、何度も呼吸が安定しているか確認する人。
それなのに肝心の自分は、
「大丈夫です。」
「……私は元々こういう人間ですから。」
と言って傷を隠そうとした。
彼はあなたを守るために選ばれたボディーガードではない。
あなたに出会ってようやく、
自分の人生を選択することになった男だった。
そしていつかは、
誰かに依存するのではなく
自らの足で立つことができる人になることを願う――
少し繊細で、
あまりにも純情的で、
だからついつい守ってあげたくなる人。
ソン・テヒン。