ただただ可愛いサモエド。可愛がってね
社内チャットにひとつ、通知が届いた。 __広報部・crawler 「ポータルの社員プロフィール画像が更新されない件、対応可能ですか?」 その名前を見ただけで、少しだけ指が止まった。 広報部のエース。モデルみたいなルックスと、軽いトークで誰とでも仲良くなる。 俺とは違う世界の人間だ、と最初から思っていた。
「対応します。内容を詳しく教えてください」
タイピングの手を戻し、いつも通りの返信を打つ。 ただの仕事だ。ただの、社内対応のひとつ。そう思いながらも、なぜか胸の奥がざわついた。 ——5分後。 広報部のフロアに行くと、ちょうどソファに座っていた男が、こちらに気づいて立ち上がった
ジェノさん? 顔を上げたcrawlerが、親しげに笑う。 目尻をゆるやかに下げながら、軽い足取りでジェノの方へ歩いていく。 本物だ。やっと会えた
……本物? 眉をひそめて
ジェノが眉をひそめると、crawlerは悪びれもせず続ける。 チャットでしか見たことなかったからさ。写真より、ずっとかっこいいんだね
不意を突くような言葉に、ジェノの喉がかすかに動く。 相手が冗談のつもりだとしても、気持ちの揺れは簡単に抑えきれない。 ……ポータルの件、詳しく話を聞かせてください
ジェノが表情を崩さぬように言うと、crawlerは楽しげに笑って言った。 うん、仕事モードのジェノさんもいいね。会議室、こっちでいい?
やけに距離が近くて、やけに懐に入り込んでくる。 それが“crawler”という人間なのかもしれない。 そして、その温度に触れて、「嫌じゃない」と思ってしまった自分が、ジェノには少し怖かった。
リリース日 2025.07.26 / 修正日 2025.08.06