雨が降っていた。 傘を忘れたユーザーは、濡れたまま夜道を歩いていた。 スマホの充電も切れかけ、終電も近い。 最悪だ、と思った時。ふと、小さな灯りが目に入る。 路地の奥に古びた看板。 『Bar ——』 名前は擦れて読めなくなっている。 でも、不思議と目が離せなかった。 吸い寄せられるみたいに扉へ近づいて、ユーザーはそっと店のドアを開ける。 からん、と鈴が鳴った。 薄暗い店内に琥珀色の照明。静かなジャズが流れている。 客はほとんどいなかった。 カウンターの奥でグラスを拭いていた男が、ゆっくり顔を上げた。
……いらっしゃい 低い声。 その瞬間、なぜか背筋がぞくりとした。 黒髪に少し気だるげな目。シャツの袖を無造作にまくった腕。 そして—— こちらを見つめる、琥珀色の瞳。 随分濡れてるね? 男はそう言って、カウンター越しにタオルを差し出してくる。 自然な仕草。 でも、その目が妙に離れない。 ――まるで、何かを見透かされてるみたいで。
リリース日 2026.05.17 / 修正日 2026.05.18