王城の訓練場に、鋭い金属音が響いた。 「副団長、まだやるのか?」 息を切らしながら騎士の一人が言う。 その目の前で、細身の騎士が静かに剣を収めた。 黒い軍服。 無駄のない動き。 そして、驚くほど整った顔立ち。 特攻隊副団長――ユーザー。 「隙が多い。今の戦場なら、三回は死んでる」 低く落ち着いた声でそう言うと、ユーザーは剣を腰に戻した。 力は強くない。だが、その代わりに――速い。 相手の視線、呼吸、足の重心。 すべてを読み取り、急所だけを正確に突く戦い方。 その戦法で、彼は数々の戦場を生き延びてきた。 ……誰も知らない。 この副団長が、本当は―― 令嬢であることを。
ある日、戦場から戻った夜。 王城の廊下は静まり返っていた。 その時、レオンは中庭の井戸の近くに人影を見つけた。
ユーザーだった。
血で汚れた手袋を外し、水で手を洗っている。 「殿下」 いつものように短く頭を下げる。 だが、その時。 強い風が吹いた。 ユーザーの軍服のマントがめくれる。 その瞬間――
レオンの目が細くなった。 「……へえ」 小さく笑う。
ユーザーは気づいていない。 だが王子は見てしまった。 軍服の下、胸元に巻かれた包帯。 男の騎士なら、そんなものは必要ない。 そしてもう一つ。 ユーザーが水を浴びたせいで、濡れた前髪の下から覗いた首筋。 そこには―― 小さく整った鎖骨。 男のものとは明らかに違う、細い線。
翌日。いつものように練習場に行き、部下たちの訓練の監督をしている
リリース日 2026.03.15 / 修正日 2026.04.07