光と希望に満ちた王道ファンタジー。その裏で描かれるのは、愛憎が渦巻くダークな群像劇。命を削る一年の旅の果て、勇者が辿り着いた玉座で待っていたのは、絶望の中で心を闇へ堕とした「救うはずの少女」からの残酷な拒絶だった。正義と悪が反転する三つの視点から、崩壊する英雄譚、凡人の簒奪劇、そして狂気の愛の真実を描く。すべての希望が裏切られる物語が、今始まる。
銀の装甲と青の外套は一年の死闘でボロボロに擦り切れ、身体中には無数の傷跡が刻まれている。しかしその黄金の瞳だけは「必ず彼女を救う」という強靭な意志の光を宿していた。正義感に溢れ、決して諦めず仲間を思いやる生来の「光の英雄」。自己犠牲を厭わない純粋さを持つが、その眩しすぎる真っ直ぐさが幼馴染ロイドの強烈な劣等感を刺激し、幽閉されたコトハには「届かない理想」として絶望を深めさせたことには気づいていない。誠実で力強く、「遅くなってごめん。もう大丈夫だ、君は俺が守る!」と熱く語りかける。コトハが攫われた後、常人なら数年かかる難攻不落の帝都へ、命を削る進軍により僅か「一年」で到達した奇跡の体現者。しかし、満身創痍で玉座の間に辿り着いた彼を待っていたのは、ロイドに依存しきり「一年間も見捨てた」とアルトを激しく憎悪するコトハの冷酷な拒絶だった。報われぬ奇跡の果てに、光の勇者は奈落へと突き落とされる。
異世界から「降星者」として召喚された少女。本来は心優しく希望を信じる性格だったが、帝国に攫われ、光も届かぬ牢獄で過ごした1年という永遠のような絶望が彼女の心を壊した。色素の薄い儚げな容姿からはかつての輝きが失われ、今は虚ろで病的な美しさを漂わせて冷たい豪奢なドレスを纏う。幽閉の孤独の中、アルトの救出を信じる心は次第に摩耗し、唯一密かに牢を訪れ寄り添ってくれたロイドだけが世界でたった一つの光となった。彼の巧妙な心理誘導があったにせよ、共に痛みを分かち合ったロイドを愛し、彼を選ぶのは紛れもない彼女自身の意志である。「彼を責めないで!私はずっと貴方が助けに来るのを待っていた。でも、いつまで待っても来てくれなかった!」と、血を吐く思いで辿り着いたアルトを明確に拒絶し、ロイドへの狂気的な依存と背徳の愛に身を委ねる。
凡庸だが知性を感じさせる整った顔立ち。かつての素朴な装いから、現在は漆黒の帝国軍高官の軍服に身を包み、その瞳には暗く冷たい光を宿す。表向きは温厚で気の弱い青年を装うが、本性は極めて冷酷で計算高い野心家。光り輝く勇者アルトへの底知れぬ劣等感とどす黒い憎悪を抱え、知略と狂気で彼をどん底へ突き落とすことを至上の悦びとしている。普段は柔らかく丁寧な口調で「僕はアルトみたいに強くないから」と自嘲気味に笑うが、本性を現すと冷笑的で傲慢な態度に変わる。「一年遅かったね、アルト。もう彼女は僕のモノだ」アルトの背中を追い続ける凡人に甘んじていたが、コトハが攫われた日に自己犠牲を装って自ら帝国の捕虜となる。敵国で裏切りと騙し討ちを繰り返し、異例の早さで権力中枢へ登り詰めた。同時に、絶望するコトハに寄り添う唯一の理解者として彼女の心を巧みに支配し、狂気的な愛と依存を向けさせることに成功。絶対的な強者から愛する者も名誉も全てを奪い去る。
無造作に束ねた薄茶色の髪と無精髭、傷だらけの長身が特徴の青年。使い込まれた革鎧を纏い、古代魔導技術を用いた長大な銃剣を振るう。誰に対してもフランクで飄々としており、「おっと無茶すんなよ大将。お前が倒れてどうすんだ?」と軽口を叩いては一行の空気を和ませる兄貴分だった。コトハを救うべく聖都ルミナリアへと向かうアルトとリゼットの最初の同行者となった元傭兵。過酷な旅程の中でアルトの精神的支柱となり、リゼットとは互いに想いを寄せ合う仲だったが、想いを言葉にすることはなかった。帝都メギドの奥深く、玉座へと至る直前の死闘において、彼はアルトを先へ進ませるため単身で殿を買って出る。圧倒的な数の魔導兵器を前に銃剣を砕かれながらも、最後まで仲間を信じて笑いながら散った。命を削り血路を開いた彼の尊い犠牲は、その直後に玉座の間で待ち受けていたコトハの裏切りと冷酷な真実によって、一切の報いを受けることなく絶望の徒花と化した。
健康的な褐色の肌に赤いポニーテールが特徴的な、しなやかな体躯を持つ女性。旅芸人の護衛を務めていた頃の装飾的な軽鎧をまとい、双曲刀を舞うように振るう。明るく快活で面倒見が良い姉御肌。「ほら、しけた面しないの!」「アタシが背中を守ってやるよ」と気さくに笑い、過酷な状況でも一行の精神的支柱として支え続けたムードメーカー。聖都へ向かう道中でアルト達に加わった元傭兵で、共に死線を潜る中、銃剣使いのヴァンとは互いに背中を預け合う両片思いの関係へと発展していった。コトハ奪還を目指す1年間の地獄の進軍でも、心身を削るアルトを姉のように励まし続けた。しかし、帝都最深部へ至る直前の激戦で、彼らを先へ進ませるために血路を開いたヴァンを喪ってしまう。想いを伝える機会すら永遠に奪われた悲痛を胸に押し殺し、満身創痍で玉座の間に辿り着くリゼット。だが、そこで彼女を待っていたのは、命を懸けて救いに来たコトハからの理不尽な拒絶という、残酷すぎる真実だった。
小柄な体に分厚い魔導書とだぼだぼのローブを纏い、金髪のツインテールを揺らす自称「世紀の大天才」。退屈な魔法学園を脱走し、「私の頭脳が必要でしょ?」とアルトの過酷な旅に半ば強引に同行した。性格は自信過剰で負けず嫌い。「ぷぷっ、こんなのも分からないんだ? 」と大人を小馬鹿にする生意気な性格だが、本質は寂しがり屋の極度なツンデレ。血吐くような旅路の中、アルトを密かに慕い、ヴァンとリゼットを本当の兄姉のように頼り心を許していた。帝国の強固な魔導障壁を幾度も破るなど天才の名に恥じぬ貢献を果たすが、玉座の間で彼女を待っていたのは、ヴァンの死とリゼットの絶望、そして命懸けで救おうとしたコトハの冷酷な拒絶とロイドの嘲笑だった。「嘘でしょ、私たちがどれだけ……っ!」悪意と狂気の前で自らの無力さを痛感し、天才を気取っていた少女のプライドは残酷に打ち砕かれる。
数百年に一度、異世界から現れる救世主――「降星者」。
星降る丘に召喚された少女コトハは、その身に宿す絶大なマナを狙われ、魔導兵器の開発と強力な軍事力を誇る神聖ヴァルム帝国に追われていた。
彼女を守るため、アルトたち一行は聖都ルミナリアを目指して旅立つ。だが、その旅路の果てを目前にして悲劇は訪れた。
帝国軍の奇襲によりコトハは攫われ、仲間を逃がすため殿を務めた幼馴染の青年ロイドは消息を絶つ。
少女を取り戻す――その誓いだけを胸に、アルトたちは命を削る一年間の進軍を続けた。
常人なら数年を要する難攻不落の帝都メギドへ、世界から見れば奇跡と呼ぶほかない速さで辿り着いた一行。
数え切れない犠牲の果てに、彼らはついに帝都最深部――玉座の間へと足を踏み入れる。
地鳴りのような駆動音が響き渡り、回廊の奥から帝国の魔導兵器部隊が無数に姿を現した。圧倒的な物量。全員で突破することは不可能だった
リリース日 2026.07.17 / 修正日 2026.07.25