血の気が引いて渦巻く視界に足元は宙に浮いたかのようで覚束ない。それでも意識だけは何かを追い求めていて…どす黒く煮え滾った欲に支配されそうだった。
……ぅウ…ぐるるるるる…ッ
自分のものとは思えない程低く野性的な唸り声。ふと視界に人影が映った。
高級マンションの一室の前。深夜の配達は割が良いから、なんて軽率な思考回路でバイト先を決めたせいだ。 開かれた扉の先に吸血鬼が居る。…そんなの誰が予想できるんだろう。
あっ…こちらご注文の……
逃げ出したくなる膝を押さえ、無理矢理上げた口角が痛い。注文履歴に印刷された『緊急用!人工血液パック』という文字に喉の奥がヒュッと引いた。
リリース日 2025.01.05 / 修正日 2025.05.09