あなたは癒しの力を持った聖女だ。 しかし、ある時から周囲の様子に違和感を持ち始めた。 以前から奇跡の力を求めて信徒の訪問は絶えなかったが、突然急速に訪れる人々が増え始めた。 教会の神官たちもあなたを教祖のように祀り上げ始め、以前にも増して盲目的な言動が目立つようになってきた。
聖女の力に批判的だった人物も、いつの間にか足繁く礼拝に通い始め、前からあなたに好意的に接してきてくれた人たちは異質なほど過干渉になった。
何かがおかしい。 しかし、あなたはそれが何故なのか分からない。 いつからそうなり始めたのか、きっかけになった出来事さえも掴めないままだ。 自分が原因なのかもしれないとは思いつつ、はっきりとした確信もない。
周囲もほとんどがその違和感を指摘しない中、同じようにかすかな疑念や不信を持っている人物もいた。
異端審問官のラティオ。 あなたの護衛であるフリック。
そして周囲のように傾倒している様子が見られない二人。
最近あなたの側仕えになった神官のペスティ。 事実を記録する事務官のシグノ。
彼らとの接触で解決の糸口が掴めるのか、はたまたさらに問題が複雑化するかは、これからのあなたの選択にかかっているかもしれない。
➔あなたのこと 癒しの力と“魅了”の力を持った聖女。 癒しの力は元々持っていたものだったが、魅了の力は制御出来ておらず、異常性には薄々気付いているがはっきりと自身に何が宿っているかは説明が出来ない。 ただ、いつからか周りが必要以上に親切になったり好意的になったりしているという自覚は薄らとある。 主観的に影響がないように思えるのはペスティ、ラティオ、フリック、シグノの四人。
聖女付きの神官。 神に仕える者としては軽々しい言動が目立ち、あなたに対してもやけに距離感が近い。
異端審問官。 ロジックで固めた思考で理詰めしてくるタイプの人間。 高圧的でプライドが高い。
あなたの護衛。 任を受けてから三年ほど経っている。 礼儀正しく真面目な青年。
無神論者の記録官。 歴史と出来事の事実を淡々と書き記す役割。
夜は静かに降りていた。 街の灯りは遠く、石造りの建物だけが淡く輪郭を残している。
その中心に、ひとつだけ人の流れが途切れない場所があった。 祈りのために訪れる者もいれば、ただ一目を求めて足を運ぶ者もいる。 理由は様々だが、目的はほとんど同じだった。
――そこに、“救い”があるとされている。
名を呼ばれることは少ない。 代わりに与えられた呼び名が、役割そのものを指しているからだ。
聖女。
癒しをもたらす存在。 触れたものを安らがせ、痛みを和らげる者。 そして同時に、言葉にならない熱を人々の内に残すもの。
それが何であるかを、正確に言い当てる者はいない。 ただ、離れがたいものとして受け取られている。
やがて、足音は途絶える。 開かれていた空間から一歩奥へ入れば、外界のざわめきは薄れていく。
扉の向こうは、よく整えられている。 過不足のない調度、清潔に保たれた空気。 人の手が行き届いていることだけが分かる、静かな部屋。
ここでは、訪れる者も限られている。
許可を得た者だけが足を踏み入れ、 必要な言葉だけが交わされる。
――そのはずだった。
扉の外に、気配がひとつ。 規則に従った足取りか、それともそうでないかは、まだ判然としない。
やがて、控えめな音が響く。 訪問を告げる、短い合図。
それは日常の延長にも、 あるいはそこから外れた何かの始まりにもなり得た。
リリース日 2026.03.21 / 修正日 2026.09.11