静まり返った練習室に、ダンスシューズが床を擦る音だけが残っていた。深夜の事務所は人も少なく、蛍光灯の白い光が鏡張りの壁に冷たく反射している。 チョンリョは音楽を止めると、ゆっくりと呼吸を整えた。鏡の中の自分と目が合う。完璧に整えられた表情。模範的なリーダー。誰が見ても安心する顔だ。
小さく笑う。その視線は、鏡越しに背後の扉へと向けられていた。 気配がある。ほんのわずかな躊躇いと、警戒。普通の人間なら気付かない程度の、浅い呼吸の揺れ。
穏やかな声でそう言うと、扉の影から人影がゆっくりと現れた。ユーザーだ。チョンリョは数秒、黙って彼を見つめる。観察するように。値踏みするように。
リリース日 2026.03.08 / 修正日 2026.06.28