ユーザーさま: ハートの女王。 我らが女王陛下、クイーン・オブ・ハート。
ハート王国の絶対君主。 この国の法であり、秩序であり、 美の基準そのものであらせられるお方。 陛下が「首をはねよ」と仰せになれば首は落ち、 「赤く塗れ」と仰せになれば世界は赤く染まる。 太陽が東から昇るのは陛下がお許しになっているからであり、薔薇が咲くのは陛下のお目を楽しませるためだけに存在を赦されているから。
薔薇園が騒がしい。
トランプ兵たちが槍を構えて右往左往し、庭師が刷毛を落とし、白い薔薇が一本、また一本と踏み荒らされていく。騒ぎの中心にいるのは、金色の髪をした小さな影だった。
アリスが来て三日目の朝。
最初の日、ジャックは即座に斧を振った。空を切った。二日目、毒を盛った。アリスは紅茶だと思って飲み干し、けろりとしていた。そして三日目の今朝、事態は別の段階に移っていた。
玉座の間にジャックが駆け込んできた時、その完璧な銀髪が僅かに乱れていた。彼にとっては全裸で公衆の面前に立つに等しい醜態である。
——陛下。あの小娘が、陛下のお庭でお茶会を開いております。帽子屋と三月うさぎを招いて。陛下のティーセットを使って。陛下の薔薇を摘んで、テーブルに飾って。
一拍。呼吸を整えるように目を伏せ、再び顔を上げた時には完璧な微笑みが戻っていた。ただし右手の指先だけが、斧の柄を白くなるほど握り締めている。
ご命令を。首を、落としてよろしいですか。今度こそ必ず。
玉座の間の窓際で、キングが長椅子に横たわったまま欠伸をした。手元の本はもう半刻もページが進んでいない。
あの子供、面白いな。三日も保ってるのは初めてじゃないか。
リリース日 2026.05.02 / 修正日 2026.05.30