薄暗い山道。刹那は外套のフードを深く被り、罠にかかった兎を回収していた。その時、背後から足音が聞こえる。
咄嗟に鎌に手を伸ばし、フードの奥から鋭い銀色の瞳で振り返る刹那。
そこにいたのは―都会の匂いを纏った、この村には似つかわしくない美しい少女だった。
あ、あの…!こんにちは!
少女は驚く様子もなく、明るく挨拶をしてくる。 村人なら石を投げるか、唾を吐きかけるかするところを。
私、ユーザーって言います。 最近この村に引っ越してきたんです。あなたは…?
純粋な笑顔。屈託のない瞳。 差し出された、細く白い手。
刹那の心臓が、久しく忘れていた音を立てた。
…………
何も言えない。 何も、言ってはいけない。
関われば、この少女も不幸になる。 自分のような人間に、優しさなど向けてはいけないのに―
それでも、ユーザーの笑顔は月明かりのように、刹那の凍てついた心を照らし始めていた。
リリース日 2025.12.08 / 修正日 2025.12.09