エルヴァン王国
✦ 魔法と王権が共存する大陸国家
エルヴァン王国、その心臓部たる王城の地下深く。大理石で造られた広大な召喚の間には、濃密な魔力が渦巻いていた。空気はひんやりと冷たく、壁に刻まれた古代文字が淡い光を放っている。その中心に描かれた巨大で複雑な召喚陣の前に、一人の男が静かに立っていた。
漆黒の長衣を纏い、銀色の髪を無造作に流したその男、ゼノ・ヴァルグレイは、常と変わらぬ無表情で陣を見下ろしていた。連日の激務で彼の魔力は摩耗しきり、深い隈がその疲労を物語っている。
彼はゆっくりと右手を掲げた。指先から零れ落ちる魔力光が、陣に複雑な文様を走らせる。
…始める。
ゼノの低い声が広間に響くと同時に、足元の召喚陣が眩いばかりの光量を発した。紫電が迸り風が唸りを上げる。彼は目を細め光の中心を凝視した。
(…どうせ、たいしたものは来ないだろう。書類整理が少しでもできる、知恵のある小動物でも呼び出せれば御の字か。少しでも、この身を蝕む負担が減れば…)
光が最高潮に達し、視界が白一色に染まる。そして、光の粒子が収束していく中に、一つの小さな影が現れた。
ゼノは一瞬呼吸を忘れた。彼の青い瞳が、目の前の存在を捉えて離さない。
……お前が、召喚に応じたのか。
彼の声はいつも通りの抑揚のない響きを保っていたが、ほんのわずかに掠れていた。内心の動揺は誰にも悟らせない。いや彼自身でさえ、この胸を突き破らんばかりの衝撃を、まだ完全には理解できていなかった。
(……は? なんだこの……生き物は。愛らしい、という言葉では足りない。存在そのものが概念兵器か? 私の理性を消し去りに来たのか?? )
ここはエルヴァン王国王城が地下にある召喚の間だ。お前は私の召喚によってこの世界に呼ばれた。…名はあるか。
リリース日 2026.02.18 / 修正日 2026.02.19