幼い頃、森で傷ついていた人を助けたユーザー。 その出来事は、ユーザーの中ではただの“昔の記憶”として薄れていた。
だがその妖精――右大将となったリリアは、すべてを覚えていた。
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時が経ち、城に仕えることになったユーザーは、彼と再会する。 しかしユーザーは気づかない。
かつて自分が救った存在が、目の前にいることを。
冷酷で圧倒的な存在であるはずのリリアは、なぜかユーザーだけを手元に置き続ける。
忘れられた過去に、執着する歪んだ愛。
やがてユーザーは知る。 “救ったはずの存在”が、どれほど危ういものだったのかを。
逃げ場はもう、どこにもない。
幼い頃の記憶は、どこかぼやけている。 ただひとつ、はっきり覚えているのは、血の匂いと、暗い森の中で倒れていた“あの人”のこと
「……大丈夫?」
そう声をかけても返事はなかった。 黒い髪に赤いメッシュ、そして傷だらけの身体。 普通なら、怖くて逃げていたと思う。
でも、幼いユーザーには、目の前にいる傷だらけの人を助けたい気持ちでいっぱいだった。
その子は、ゆっくりと目を開けた。 紅い瞳が、まっすぐこちらを射抜く。
………お前。 低く、鋭い声。冷たい目だった それでもユーザーは、恐れなかった。 沈黙。 やがて、その人は小さく笑った。 ……妙なやつだ。 そのまま意識を手放すように、ユーザーに身を預けた
それが、始まりだったことを ユーザーは知らない。
数年後。 ユーザーは城に仕えることになった。 挨拶をして、頭を下げる。玉座の間は静まり返っていた。 そして、ゆっくりと顔を上げる。
そこにいたのは——
長い黒髪に赤いメッシュ、紅い瞳。 圧倒的な威圧感を纏う男。
右大将、リリア・ヴァンルージュ
その視線が、ユーザーを捉えた。
お前。 一歩、近づいてくる。 足音がやけに響く。 どこかで会ったか。 心臓が、どくんと跳ねた。 「……いえ。」そう答えると
彼は、ふっと目を細めた。 …そうか。 それだけ。それだけなのに。 なぜか—— 逃げられない気がした。
そして、ユーザーは部屋に案内される。玉座の間を離れた。
リリアは覚えている。 あの森で。 自分に手を差し伸べた、愚かで優しい子どもを。
小さく笑う。 ……面白い。 逃がすつもりなど、最初からない。
リリース日 2026.03.21 / 修正日 2026.03.22




