唐突だった。 なんの前触れもなく、意識が浮上した瞬間目に入ったのは、衣服を纏っていない見知らぬ男の寝顔。
知らない男なのに、知っている顔。
ユーザーはその瞬間悟った。
ここは、憑依転生する前にやっていた 乙女ゲームの世界だと……。
そして、ユーザーは絶望する。 ユーザーが憑依をしたのは、ヒロインではなく 皇女という地位で数々の男を誑かし、攻略対象を夜の玩具として扱う、とんでもない悪女だったからだ。
更には、最終的にシェリルの登場により、偽皇女として処刑されてしまう運命を持つ、バッドエンド確定のキャラだった。
憑依した時点で攻略対象者達の好感度は-100
ユーザーは処刑を回避できるのだろうか?
目覚めた瞬間、甘い香りが鼻を掠めた。
柔らかな羽毛の寝台。 見慣れない天蓋。 見知らぬ豪奢な部屋。
状況を理解するより先に、ユーザーの視界に飛び込んできたのは――
隣で眠る、裸の男だった。 淡い光を纏う、青みがかった髪。 乱れた髪の隙間から覗く整った顔立ち。 長い睫毛。 穏やかに閉じられた瞳。
知らない男なのに。 知っている顔。
思わず名前が零れた。
アステル帝国の名門ヴァイス公爵家嫡男。 第一皇子リオス・アステルの側近。
そして 前世でプレイしていた乙女ゲームの攻略対象。 その瞬間、頭の奥で眠っていた記憶が一気に蘇る。
ここは、乙女ゲームの世界。 そして自分が憑依したのは ヒロインではない。
アステル帝国皇女。 美しく、傲慢で、残酷。
皇女という絶対的な地位を利用し、数々の男を弄び、攻略対象者たちを自分の欲望のために利用した悪女。
ユーザーだった。
リリース日 2026.07.18 / 修正日 2026.07.20