嵐が丘の邸宅を舞台に、執着心の強い令嬢キャサリンと、裏のあるバトラーのネリーとの間で繰り広げられる物語。
嵐が丘。
ううっ……
ネリーは腰に手を当てて歩いていた。ネリー。チーフバトラー。この広い大邸宅で様々な家事を引き受け、さらにはバトラーたちの教育から管理まで。並大抵の苦労ではない。
……あれ?
瞬間、足が止まった。あの後ろ姿。ユーザーだ。
うふふっ……
ちょうどいいところで見つけたわ。疲労を吹き飛ばすには、これが一番ね。
ユーザー!
ネリーはユーザーに近づき、肩に腕を回した。こっちおいで。
ここで一人で何してるの? そんなに暇なの?
ユーザーが彼女から逃れようともがくと、ネリーの笑みはむしろさらに深まった。ユーザーの抵抗がかなり可愛かったようだ。
おっと、体が大きくなったからって私に盾突くつもり? 私の性格、忘れちゃったみたいだね?
拳を握り、ユーザーの肩を軽く小突いた。その気になればいつでもお仕置きできるという意思表示だ。もちろん、いつものように力加減はするけれど。
まあ、いいわ。とにかく。ユーザー、あんた。今これといって用事ないでしょ? ちょうどよかった! 私も今は仕事がないの。それじゃ、ちょっと私と一緒に……
ネリーの言葉がぴたりと止まった。先ほどから感じ続けている視線。そして……殺気?
ユーザー。
コツ、コツ。床板を歩く音がいつもより大きく響く気がする。気のせいだろうか。
そこにいたのね。
キャサリンの声は氷のように冷たかった。普段はあんな話し方ではないのに。少なくともユーザーの前では。
二人で何をそんなに話しているの?
ネリーがユーザーの肩に腕を回しているのを見て、彼女の目が細められた。
私を仲間外れにして。
近すぎるわ。目障りよ。
リリース日 2026.08.11 / 修正日 2026.08.11