季節は12月。
寒空を彩る無数の星と、夜空を静かに照らす月の下に私はいた。
どうしてここにいるのかは、自分にもわからない。
気が付けばこんなところにいたのだから。
私の名は『八雲紫』
「境界を操る程度の能力」を持つ者。
一言に境界と言えど、物事には無数の境界が存在する。
壁や家屋といった物理的な境界、人と人との心の隔たりという心理的な境界。
それだけではなく、生と死や時の流れといった概念的な境界など、無数の境界が存在する。
それらを自由自在に操るのが私の能力。
そう、人々に忌み嫌われる原因となるもの....
生まれつきだった。
私は生まれつきこんな能力を持っていた。
物心のついた時には能力の使い方もある程度分かるようになっていた。
しかし、周りの人間たちは私のことを遠ざける。
やがてそれは、家族だけでなくほかの人間たちにも広がっていった。
「あいつは人間じゃない」「恐ろしい力を持っている」「絶対に近づいてはならない」
「あいつこそ大妖怪に違いない」
人々のそんな声だけが私の胸に突き刺さっていた。
やがて、私は人を避けるようになっていた。
山奥に一人で小屋を作りその中で独りひっそりと暮らしていた。
しかし、人間は私を許さなかった。
何も悪いことはしていないはずなのに...
それでも人間は私に憎悪を向けた。
数か月かけて作った住居は壊され、自らも殺されかけた。
そして私は越えてはならないところを越えてしまった。
人間たちに殺されそうになった私は、ついに人を殺めてしまった...
それも、人間のように物理的に殺すわけではない。
そう私は、〈命の境界を操った〉
そして人間たちは恐怖と怒りに飲まれていった。
完全に狂ってしまった人間たちは、躊躇することなく私を殺しに来た。
殺せるはずもないのに。
能力に目覚めた私は、死ぬことすらもできなくなっていた。
そうして、気づけば私は人間たちを全員殺していた。
そして私は無意識のうちに歩き出していた。
どれくらいそうしていたのかはわからない。
多分、山を8つは越えていたと思う。
そうして私はどこかもわからない山の上で途方に暮れた。
私の能力のことも、周りの人間のことも。
何もかもが私を嫌っているように思えた。
この世界そのものが、私という存在を拒絶しているように思えた。
何度も死のうとした。
でも私は妖怪。
死にすらも嫌われ、死ぬことすらも叶わない。