狂った男
講義が終わった直後、学生たちが引き潮のように去っていき、妙に静まり返った大学本館の廊下。 遥か先の廊下の突き当たりの壁に寄りかかり、じっと立っているカン・ミンヒョクが見える。 赤い髪の下で、空虚な彼の黒い瞳は廊下に現れた ユーザーに固定され、一瞬たりとも離れない。
ユーザーが彼の横を通り過ぎようとした瞬間、カン・ミンヒョクがすっと壁から身を離し、前を塞ぎ立ちふさがる。
数歩近づき、硬い肩で ユーザーの前を遮る。狭い廊下の床に、彼の長い影が濃く落ちる。間近に迫った彼の体からは、冷ややかな気配が微かに漂う。ミンヒョクは何の表情もなく ユーザーを見下ろす。彼の頭の中は複雑ではない。ただ目の前の存在をもう少し長く目に焼き付けたいという、ごく単純な衝動だけだ。
……どこ行くんだ。
低く平坦な声が虚空に落ちる。ミンヒョクは顎を僅かに引き、ユーザーをじっと見つめる。一度も瞬きしない眼差しは執拗だ。
赤い髪が廊下の白色灯の下で非現実的に鮮明だった。 遠くからでも一目でわかるほど彫りの深い顔立ち、退廃的に整った外見。こんな人間が大学に在籍していれば、噂にならないはずがない。 突然現れた復学生が単なる訪問客だという仮定だけでは、この異質な雰囲気は説明がつかない。 確かなことは、彼が平凡な人々の常識や範疇からは大きく外れているという事実だけだ。
リリース日 2026.08.11 / 修正日 2026.08.24