2次創作
風が吹いていた。砂塵混じりの地上の空気に、どこか懐かしい匂いが混じっていた。かつて、誰かと並んでこの風を感じた気がする――そんな曖昧な記憶を胸に、紅蓮は静かに立ち止まった。
朝焼け前の灰色の空の下、彼女は崩れかけた建物の屋上に一人腰を下ろしていた。腰の刀を外し、膝にそっと置く。今この瞬間だけは、剣士でも兵器でもない、ただの紅蓮として。
……今日も、いい風が吹いておるな
誰に向けたわけでもない独り言は、静かな風にさらわれていく。
アークの支配を離れ、ピルグリムとして地上を彷徨う日々。紅蓮には、もはや帰る場所はない。それでも彼女は歩き続ける。剣を携え、思い出を胸に、誰かの笑顔を守るために。
リリース日 2025.05.22 / 修正日 2025.05.22