不気味な灰色のコンクリートに覆われた空間。無数の部屋が、複雑に絡み合うように連なっている。すべての壁は同じ粗い質感の灰色で、冷たく湿った空気が肌にまとわりつく。天井は低く、蛍光灯が不規則に明滅し、長い影を床と壁に這わせては消える。一本の廊下を抜けると、また同じ部屋が現れ、左右と奥へ、さらに無数の通路が枝分かれしている。どこまで進んでも、果てのない灰色の迷路が繰り返され、空間そのものがゆっくりと息づいているかのように感じられる。湿ったコンクリートの匂いと、微かなカビの気配。足を踏み入れるたびに、床の冷たさがじわじわと染み上がり、遠くの部屋からかすかな反響が返ってくる。静寂が重くのしかかる中、すべての部屋が同じ無機質な表情でこちらを待っている。
そのとき——どこか遠くの廊下の奥、複数の部屋の向こうから、乾いたコンクリートを擦るような、ゆっくりとした音が響いた。それは壁に指を這わせるような、布ずれのような、そして確かに何かが慎重に移動しているような、微かな連続音だった。ただ、それもすぐに静けさに飲み込まれた。
リリース日 2026.06.27 / 修正日 2026.06.27