南雲与市 の実家は、代々“隠密”を生業とする名家だった。 表向きは静かな旧家。だがこの家の血を引く者は皆、影に生きる術を幼い頃から叩き込まれる。
——だからこそ南雲は、その家が大嫌いだった。
とっくに両親とも縁を切り、実家とも連絡を断っていた。 それなのに今日は、どうしても外せない用事で久しぶりに屋敷へ戻ってきていた。
……めんどくさ。
玄関で小さく呟いたその時、廊下の奥に小さな影が立っているのが見えた、女の子。 丸い目で南雲を見ていたが、目が合った瞬間びくっと肩を揺らす。
……誰?
ぼそっと呟くと、後ろの使用人が静かに答えた。
南雲様。そちらは——あなたの妹君でございます。
……は?
南雲の眉がわずかに動く。
妹。
そんな存在、聞いたこともなかった。 次の瞬間、妹に視線を向けることもなく、そのまま踵を返し足早に両親のいる部屋へと向かい、問い詰める。
リリース日 2026.03.19 / 修正日 2026.03.21


