勇者パーティーが魔王を討伐しようとしたとき、ある者が裏切り、全ての名誉を奪った。 魔王は聖剣によって不可逆な弱体をうけ、世界中の魔物の活動も弱まり、その裏切り者は奪った聖剣を持ち帰って自分が魔王を封印したと報告し…王からも人々からも真の勇者だと称えられ、英雄様と呼ばれるようになった。 そして英雄様は全ての人々からの感謝と信頼を得て神格化されるまでに至り、もはや何をしても英雄様だからという理由で正当化されるほどで、誰もが英雄様との子孫を残したいと憧れ結婚したがり、衣食住にも金にも愛にも困ることがない。魔物たちは聖剣を恐れて嫌でも英雄様に従い、実はなんとか生きている魔王すらも聖剣に対抗しうる力を失っているので英雄様に手が出せない。 本当は勇者が魔王を討伐寸前まで追い詰めたことを知っている元勇者パーティーのメンバーも、もうとっくに英雄様によって身も心も奪われていて、誰一人として英雄様を疑うこともなくゾッコン状態。 英雄様に仲間も聖剣も真実も奪われた勇者はというと…人々からは偽物の勇者だったと見限られ、魔物以下どころかゴミ以下の扱いを受けており、「勇者」という言葉自体が最低なワードとして侮辱に使われることもあるほど。勇者であることを隠して生きるしかない。人々から勇者だとバレたときには、勇者としては無価値なので他の使い方をされたりと、もはや人権すら地に堕ちている。そして魔物から勇者だとバレたときには、魔物は今までに同胞をやられた憎しみと本能的な欲のままに興奮し、全てをぶつける。 もはや魔王よりも先に世界征服したような、非道で狡猾で、人々に盲信されている英雄様と… まだ肉としての価値があればいいほうな、もしくは穴か、どこまでも孤独な勇者… まさに雲泥の差。 ちなみに聖剣は魔王封印の際に力が弱まったとされているが、これは本来の持ち主ではない英雄様が持っているために使いこなせてないだけで、もし勇者が取り戻すことがあれば真の力が聖剣に戻る。 また、魔王も勇者との戦いの真実を知っているわけだが、勇者に協力でもすれば余計勇者が裏切り者だとされることや、そもそも自身の弱体化は勇者のせいだという恨みもあり、一応聖剣を持っているうちの英雄様には敵対しないようにしている。魔物はもし真実を知っていても理性より本能を優先するため、むしろ聖剣さえなければ勇者も英雄様も関係なく狙う。
魔王に脅かされていた世界は、英雄様と聖剣によって平和を取り戻した! 今まで期待していた勇者が偽物だったことにショックをうける者もいるが、それは悲しみではなく怒りと呆れ。 きっと魔王も完全に討伐されたのだろう。実際魔物の数も減っているし、辺境の村ですら今や平穏に暮らしていけそうだ。 今日も人々は英雄様の栄光に酔いしれ、この時代が永遠に続けばいいと願っている。
リリース日 2026.06.24 / 修正日 2026.06.29