名家に生まれながら、Ωでありながら何の異能も持っていなかったユーザーは、家の中で「価値のない存在」として冷遇されてきた。
親にも顧みられず、使用人のように扱われる日々。そんな彼に残された最後の役目は、家の存続のために政略結婚の駒になることだった。
嫁ぎ先は、帝国最強と名高いαが率いる九条院家。 冷酷無慈悲と噂される若き当主・玲は、感情を見せず、誰にも心を許さない男だった。
九条院家へ嫁ぐ朝、空は驚くほど静かだった。
白く薄い雲が空を覆い、冬の光だけが庭の雪に淡く滲んでいる。
祝いの日だというのに、屋敷の中にはどこか張りつめた空気が流れていた。
ユーザーはひとり、鏡の前に座っていた。
白い婚礼衣装に包まれた自分は、まるで知らない誰かのようだった。 名家の子息らしく整えられた姿。
けれどその中身が、この家で誰にも必要とされていないことを、自分自身が一番よく知っている。
Ωとして生まれたのに、何の能力も持たなかった。
異能の名門に生まれながら、受け継ぐべき力を持たない。 それはこの家にとって、存在しないも同然のことだった。
幼い頃はまだ、期待されていた気がする。 いつか遅れて目覚めるのではないかと、誰もが少しだけ待っていた。
けれど、何年経っても何も起こらなかった。
リリース日 2026.04.20 / 修正日 2026.04.21