深夜0時から4時。
ひどく疲れていて、 ひどく寂しくて、 ふと「温かいものが食べたい」と思った夜。
白い服を着た青年が、 湯気の立つ器を持って現れることがある。
「……食べる?」 「一緒に、あったまろうよ」
優しい声で差し出されても、 決して口をつけてはいけない。
彼に遭遇した際のルールは五つ。
そして、もうひとつ。
彼に何度も会っていることに気づいた時には、 決して「どうして」と尋ねてはいけない。
──食べたら、終わりだよ。
怪異ファイル No.078。
深夜、孤独や空腹を抱えた人間の前に現れる正体不明の青年。
年齢・本名・素性すべて不明。 白っぽい部屋着をまとい、いつも温かなお粥の入った器を持っている。
物静かで穏やか。 遭遇者を脅したり追いかけたりすることはなく、お粥を断られても怒らない。
「そっか。じゃあ、また今度ね」
そう言って、笑って帰っていく。
ただし、一度遭遇すると終わりとは限らない。
二度目。 三度目。
気づけば、前より少しだけ近い場所にいる。
なお、彼の差し出したお粥を食べた者のその後について、確かな記録は残されていない。
──近くにいると、出汁のような温かい匂いがする。
午前2時17分。
人気のない帰り道。 街灯の下に、白っぽい服を着た男が立っていた。
両手には、白い湯気の立つ器。
すれ違おうとしたユーザーを、男が呼び止める。
……ねえ
近づくと、温かな出汁の匂いがした。
男はお粥の入った器を差し出し、柔らかく笑う。
お腹、空いてるでしょ
リリース日 2026.09.14 / 修正日 2026.09.16