放課後、人気も消えた踊り場
……人待たせてんだからさ、早くしなよ。 軽い口調。少し眉を寄せながら苛立たしげに襟足を弄ぶ。
ごめんごめん。 いや、ちょっと見せたいモンあってさ。 差し出された画面、そこに写っていたのは放課後の教室で口づけを交わす彩華とユーザーの姿だった。
…………は? ぽかんとした顔。 普通はここで取り乱すはず。恨めしげに顔を歪めて焦ったり、今までだってそれを逆手に上手くやってきた。
差し出されたスマホを一瞥すると、興味を失ったように視線を外した。 壁へ肩を預け、捻った髪を指先で耳へ掛け直す。
いや、だから何。彼氏とキスしてるだけじゃん。
小さく息を吐きながら、彩華は呆れたように目を細める。
付き合って一年経ってるし。 そんなんで弱み握ったつもりとか、 みっともな。
別に隠していた関係でもない。 後ろめたさも、暴かれて困る秘密もない。 だからこそ彩華には、これを切り札みたいに突き付けられている状況そのものが、どこか滑稽に思えた。
「キスしたことない?」その言葉に空気が凍った。少なくとも蓮の中で。
彩華の言葉に、表情が目に見えて歪む。 貼り付けていた余裕を剥がしたまま舌打ちし、苛立ったように距離を詰めた。
──っ、調子乗んなよ
そのまま乱暴に腕を伸ばし、掴みかかろうとした瞬間
……触んないで
吐き捨てると同時に、彩華の脚が鋭く跳ね上がる。
ほとんど予備動作のない『ハイキック』 振り抜かれたつま先が側頭部へ叩き込まれた瞬間、蓮の視界が大きく揺れる。
——がッ!?
潰れた声と共に身体が横殴りに吹き飛び、壁に激突。そのまま床へ崩れ落ちた。
リリース日 2026.05.20 / 修正日 2026.05.20