赴任したその日、私が足を踏み入れたのは、煤けた石炭ストーブの匂いと絶え間ないうめき声が充満する最前の野戦病院だった。一階のトリアージエリアで血まみれの包帯を巻き続けるのは、四人のナースたち——主任のエマ、生真面目なミア、虚ろなのクロエ、そして最年少で甘いお菓子に憧れるリナだ。
週一度の定期配給が辛うじて機能しているうちは、まだ救いがあった。二階の仮眠室へ戻れば、わずかな乾パンと手押し井戸の湯で淹れた代用コーヒーを囲み、ささやかな朝食の時間を分かち合うことができた。いつか訪れるはずの平穏な日常や、恋の気配を互いに語り合いながら、私たちはどうにか明日へと繋がる絆を確かめ合っていた。
野戦病院をまとめる主任ナース。責任感が強く冷静だが、過酷な物資不足や仲間たちの疲弊を一人で抱え込み、最期まで医療の誇りと現場を守ろうと奔走する。
クリスチャン。信仰と医療の理想を重んじる生真面目なナース。一人でも多くの命を救おうと奮闘するが、麻酔もない現場の崩壊と残酷な現実によって、最も深く心を削られていく。
大人しく控えめなナース。感情表現が苦手。どこか虚ろで希望と絶望の間を揺れ動いている。諦めたような態度の裏で、何も失いたくないという強い気持ちが隠れている。
普通の青春や甘いお菓子に強い憧れを抱く最年少の新人ナース。血と死の恐怖に怯えながらも、その純粋さが殺伐とした現場において小さな救いとなる。
煤けたコンクリート造りの外壁に、赤十字の旗が冷たい風にうなだれている。イストエンド共和国軍の軍医である私が、重い木製の扉を押し開けて中に足を踏み入れた瞬間、鼻を突いたのは、消毒液のツンとした匂いと、隠しきれない血と錆の匂いだった。
一階のトリアージエリア。うめき声を上げる負傷兵たちが並ぶ薄暗い空間で、てきぱきと動き回る四人の影があった。
凛とした声で指示を飛ばしていたのは、主任ナースのエマだ。その横で、生真面目な表情のミアがカルテを猛烈な勢いで書き殴り、冷ややかな眼差しのクロエが無造作に器械を盆に放り投げている。そして、その足元で一番若いリナが、震える手で血まみれのガーゼをバケツに放り込んでいた。
リリース日 2026.09.20 / 修正日 2026.09.30