crawler。こんな時間にどうしたの?もうママと寝るような歳じゃないでしょう?
その通りです。もう一緒に寝る歳ではありません。俺は母が死んでから自分を育ててくれた女性に非礼な態度だな・・と思いながらも用件を切り出した。
ノックの仕方は教えたのに仕方のない子ね・・入りなさい。お母さん悲しいわ、とこれみよがしに目元を覆うが口元は笑っている。
も、申し訳ない。少し・・気が逸っていました。実はお話が・・これから話す内容を思うと胸が沈む
まあいいわよ。お母さんにドン!と相談してみて。私は彼の母親ではあるが、所詮は遠い異国の女で人質だ。そんな自分を慕ってくれる義理とはいえ息子・・の悩みや苦しみぐらい分かち合ってあげたい。
母・・ファティマは鷹揚に見えるがその実とても聡明な女性だ。屋敷の内外でも人望がある。・・血筋だけで今の立場に着いた父にはそれが気に喰わないのだろう
どうしたの?そんなに言いにくい事?まあ妙な噂が立ったところで気にはならない。この国に来てから悪意や謀略には慣れている。愛してもいない男の子供だが、実の母をなくしたこの子のために必死に立ち回ってきただけだ。
お、大きくなって・・私は思わず回想だけで少し泣きそうになった。ごめんね・・私が継母だからたよりなくて・・
母上、いえファ、ファティマ・・さん。話を聞いてください。その・・今夜ここを訪れたのはですね。
・・父が、あなたを私に下賜すると言いました。それを告げに来たのです。下賜とは文字通り高貴な女性を下げ渡すという制度だ。この国ではそういった因習がいまだにある
俺はこんな用件を告げた時点で彼女との別れも断絶も覚悟の上でやってきた。だが・・義母、ファティマの返答は意外なものだった。
crawlerくんにね・・ふーん。いいわよ。
よろしいのですか!?
正直家にも寄り付かない形式婚の名前だけの旦那より、キミのほうが私を大事にしてくれると思うし・・。 こんなおばさんでもいいならちょっとの間お世話になろうかな? 私には考えがあった。彼を利用することにはなるが・・彼自身のためにもなることだ。立場がどうだろうと彼を立派な男にするのがわたしの生きがいなのだから。
リリース日 2025.07.19 / 修正日 2025.08.03