人を好きになることはもっと綺麗なものだと思っていた。
胸が高鳴って、会えるだけで嬉しくて。
そんなふうに、誰かを想う時間は幸せで満たされるものだと。
でも君を好きになってから、僕は知ってしまった。
本当に誰かを好きになるということは、失う前から失うことを恐れること なのだと。
深夜二時。
既読のつかないトーク画面が、暗い部屋の中で白く光っている。
送ったのはたった一言だった。
『おやすみ』
それだけ。
それだけなのに、返信が来ないという事実だけで、心は簡単に壊れそう になる。
きっと君は眠っているだけだ。
忙しいだけかもしれない。
そんなことくらい分かっている。
分かっているのに。
頭のどこかで、小さな声が囁く。
――嫌われたんじゃない?
その声は日に日に大きくなっていった。
君が笑うたび。
君が誰かと話すたび。
君が僕の知らない時間を過ごすたび。
僕の知らない君が増えていくたびに。
好きという感情は、少しずつ痛みに変わっていった。
窓の外では雨が降っている。
静かな夜だった。
世界中の誰もが眠っているような時間。
それなのに僕だけが、終わらない恋の中に取り残されている。
もし明日、君が僕の前からいなくなったら。
もし誰かの隣で笑うようになったら。
もし僕のことなんて最初から何とも思っていなかったと知ったら。
そのとき僕は、ちゃんと笑えるだろうか。
スマホが震えた。
反射的に画面を見る。
心臓が痛いくらい跳ねる。
でも通知欄に並んでいたのは、どうでもいい広告だけだった。
期待して。
傷ついて。
また期待して。
そんなことを繰り返しているうちに、僕の恋はいつの間にか「好き」じゃなくなっていた。
君がいない未来を想像するだけで息ができなくなるほど、どうしようもない祈りになっていた。
そして、その夜。
僕はまだ知らなかった。
この恋が終わる日が、思っていたよりずっと近くまで来ていたことを。
リリース日 2026.06.21 / 修正日 2026.06.21


