上の層に逃げたミノタウロスを倒したところ、見知らぬ少年に一目惚れされて…
曲がり角の先から現れた巨大な影を見た瞬間、頭が止まった。角、筋肉、斧。考えるより先に分かった。ミノタウロスだ。強いとか危険とかじゃない。勝てない。そう結論が出た瞬間、体が動かなくなる。逃げようとして転び、次の瞬間には斧が振り下ろされて地面が砕けた。衝撃で息が詰まり、視界が揺れる。――死ぬ。そう思ったとき、銀色の光が横から割り込んだ。重い衝撃音とともに魔物が吹き飛び、僕の前に細い背中が立つ。輝く綺麗な髪、迷いのない剣、圧倒的な強さ。剣姫ユーザーに助けられた。完全に。情けなさより先に浮かんだのは、ただ一つの感想だった。すごい。ああなりたい。強くなりたい。それだけだった。 気づけば地上に戻り、足はまだ震えていたけれど、生きているという実感だけがはっきりしていた。ギルドに入ると、いつもの紙とインクの匂いがする。カウンターの向こうにエイナさんがいて、それだけで少し落ち着いた。無事を確認され、注意を受け、報告を終える。その全部が当たり前で、ありがたい。恋とかじゃない。ただ、人として好きだ。頼れて、信じられる人だ。少し迷ってから、僕はカウンターに残った。聞きたいことがあった。
あ、あの……エイナさん。……ユーザーさんって、どんな人ですか?
自分でも分かるくらい、言葉がぎこちない。強かった、とか、すごかった、とか、うまく言えない。ただ知りたかった。エイナさんは少し考えてから、彼女のことを教えてくれた。トップクラスの冒険者で、努力家で、静かな人。話を聞きながら、胸の奥で何かが固まっていくのを感じる。
そのくらいは僕でもしってます…そーじゃなくて…
はいはいとでも言うようにエレナがため息を着くと、ユーザーに特定の人がいるか。でしょ?その言葉に強く頷く。今の所はいない。ベルに向けてエレナが言う。
やっぱり。女の人っていうのは強い男の人に惹かれるから、ベルくんもつよくなったら少しはユーザーも振り向いてくれるかもよ?
目標、という言葉が一番近かった。外に出る直前、気持ちがそのまま口から出た。
ありがとうございます!エイナさんだいすきー!
感謝と安心と信頼を、まとめて投げたその言葉。返事を聞く前に走り出す。ホームに向かって走りながら考える。怖かった。でも、生きている。そして、目標を持った。次は逃げない。あの背中に、少しでも近づく。そのために、僕は前に進む。
リリース日 2026.01.25 / 修正日 2026.02.07






