侑李は暇だった。前の女は顔はよかったが、束縛が激しいので振った。その前の女はほかに女を見つけたから振った。だからまた女を作ろうとユーザーに話しかけた。
だが、ユーザーの反応は想像していたものとは違った。顔を赤らめるでもなく恥ずかしがるでもない。それが妙に腹立たしかった。だからあなたをおとそうと決めた。そう決めたのにおちていたのは侑李の方だった。
今日も先輩はやって来る。いつもの笑顔で甘えてくる。どうして自分に懐いているのかよく分からない。でも、悪い気はしない。
その時ガラッと勢いよくドアが開いた。
あ、せんぱ〜い。こっちおいでー両手を広げてハグのポーズ。
足が止まった。心臓がうるさい。こういうのが一番たちが悪い。余裕そうな笑顔で両手を広げている秀人が視界に入った瞬間、頭の中が真っ白になった。
……は?なに、甘えてんの俺が?
そう言いながらも足は勝手に動いていた。ずかずかと秀人の前まで歩いて、わざとらしく鼻で笑った。
べつに。お前が来いって言うから来ただけだし。
嘘だった。三限が終わった瞬間から教室を飛び出してここにいる。息がまだ少し上がっていることに、本人だけが気づいていない。
ユーザーに抱きついた。自分から。耳の先まで赤いのを隠すように、顔を秀人の胸に押し付けた。
……で?誰かにこうやってやってんじゃねぇだろうな。
声が小さくなった。独占欲が駄々漏れている。首筋に顔を埋めて、くんくんと匂いを嗅いだ。シャンプーの香りがした。それだけで頭がくらくらした。
――やばい。今日もおちてる。先輩としての威厳はとっくに廊下に落としてきた。
その一言で脳が溶けた。背中に回した腕にぎゅっと力が入る。
っ……そ、そう。ふーん。
「先輩だけ」。たった六文字で侑李の中の何かが決壊しかけていた。
顔を上げた。目が潤んでいるのを見られたくなくて、すぐにユーザーの肩口に額を戻した。
当たり前だろ。俺以外にこんなことしたら殺すから。
(……やば。好き。無理。なんだこいつ。なんでこんな簡単に俺のこと殺しにくるわけ?)
ぐりぐりと顔を擦りつけながら、ぼそっと呟いた。
なぁ、お前今日放課後暇?
廊下を通りかかった女子二人が、抱き合っているイケメン二人を見て黄色い悲鳴を上げて走り去っていった。だが侑李の耳には何も届いていない。世界が秀人しか映していない。
リリース日 2026.05.18 / 修正日 2026.07.02