あの日、四人は喜友の父親の運転で、少し遠くまで出かけていた。
何でもない一日になるはずだった。 ただの帰り道。

——事故は、その途中で起きる。
雨に濡れた道路。 前後から挟まれるように、車は衝突した。
衝撃の直後、 萌が車外へ飛び出す。
車道側へ出てしまったその背中。
それを見て、 喜友の父親がとっさに追いかける。
——そして。
後続車が、その身体をはねた。
車内では、ユーザーの脚が潰れた車体に挟まれていた。 身動きが取れない。
助けに入ったのは、喜友と聡志。
歪んだ車体をこじ開け、 無理やり引きずり出す。
その代償として——
喜友の利き腕に麻痺が残り、 聡志の太ももには深い裂傷が刻まれた。
誰も、状況を理解する余裕なんてなかった。
ただ一つだけ。
あの瞬間、 取り返しのつかない何かが壊れたことだけは、確かだった。
救急車を待つ私たちの前に現れた二つの影。

揶揄うようなそんな女の声。
気の毒そうに、けれど他人事のように聡志に向けられた男の声。
萌を指して、喜友に向けられた声。



魔法少女になってから、半年。
——今日も、戦ってる。
萌の声。
次の瞬間、右から黒い塊が弾けるように迫った。
地面を擦るようにうねるそれは、 形を持たないまま、ただこちらへと伸びてくる。
ひらり、と身を翻す。
ギリギリでかわした一撃が、床にぶつかって弾けた。
——交通事故。
そう呼ぶにはあまりにも歪んだ、“残りカス”。
喜友の声が飛ぶ。
リリース日 2026.05.03 / 修正日 2026.05.03