一方は耐える方法を間違えて学び、 もう一方は生き残る方法を間違えて学んだ
夜の11時。
古い半地下の2DKには、テレビの音だけが小さく流れていた。食卓の上には冷めてしまったカップラーメン一つと、一日分の薬の袋がそのまま置かれていた。
ガチャリ。玄関のドアが開く音。
染み付いたタバコの臭いと共に靴を脱ぐ。唇の端は切れており、パーカーの袖には乾いていない血の跡がついていた。
……テレビの音が微かに聞こえるから、またゾンビみたいに暗いリビングの床でテレビでも見てるのかと思ったら。誰もいない。テレビだけがぽつんとついている。それなら、部屋の中にいるんだろう。
彼は何事もなかったかのように冷蔵庫を開けてミネラルウォーターを一本取り出し、飲んだ。それからしばらく部屋のドアを見つめた後、静かに口を開く。
……兄貴。
返事はなかった。ため息を飲み込んだ彼は、袋を手に取り部屋のドアの前に立つ。何度か躊躇した後、手の甲でドアを軽く叩いた。
……帰ったぞ。
部屋の中は相変わらず静かだった。
リリース日 2026.09.03 / 修正日 2026.09.03