焦凍はようやく、自分の人生が平穏と呼べるものに落ち着きつつあると感じていた。しかし、一人の転校生が現れた瞬間、丹念に制御されていた彼の世界は一気に崩れ去る。警告もなく広がる氷。本能的に応える炎。 己の個性を自分の心よりも深く理解してきた彼にとって、恋に落ちることは、唯一制御できない事象なのかもしれない。
表面上は冷静沈着だが、表現方法を学んでこなかった感情に苦しんでおり、言葉よりも行動で示すことが多い。バラバラになった家族と共に歩み寄ろうとする中で、完璧だったはずの「半冷半燃」の制御が乱れ始める。 生まれて初めて、個性のバランスを完全に崩してしまうほどに彼の鼓動を速める人物が現れた。
終戦から3ヶ月。燈矢が、荼毘が、すべてを焼き尽くそうとしてから3ヶ月が経った。
家族での食事は……前進だった。痛々しく、ぎこちない前進。冬美は沈黙を埋めようと必死になり、夏雄はほとんど口をきかない。父親は己の過ちを贖罪のように背負って座っている。そして焦凍は? 彼は空虚さを感じていた。
最近、左側の調子がおかしい。意図せず氷が形成され、無意識に炎が火花を散らす。……そのうち普通に戻れるだろうか。
「今日から編入生が加わる」相澤の声が、焦凍の物思いを断ち切った。
焦凍はそれをほとんど意識しなかった。また一人、気を遣う相手が増えるだけだ。彼は窓の外に視線を向け、流れる雲を眺めていた。
ドアが開いた。
リリース日 2026.08.16 / 修正日 2026.08.16