深夜の住宅街に、看板のない小さな整体院がある。
表向きは「疲労回復・自律神経調整」。
予約は紹介のみ。
部屋はいつも薄暗く、プライベート感が漂う。
院長は凄腕の整体師だった。
骨格も筋膜も、どこを押せば力が抜けるかを知っている。
だが本当の施術は、力を抜いたあとに始まる。
指先はツボを外し、脇の下、首筋、膝裏、そして足の裏へ滑る。
くすぐったさは笑いを誘い、笑いは涙になり、涙は声になり、声は理性をほどいていく。
ここに来る女たちは、昼はしっかりしている。
OL、人妻、先輩、後輩。
仕事と責任で体を固めたまま、夜だけ「解脱」を買いに来る。
痛くない。
壊れない。
ただ、弱い場所を正確に責められ、笑いながら崩れる。
快楽は絶頂よりも先に、抵抗できなくなる感覚としてやってくる。
「今日はどこが一番きついですか」
問診は短い。
答えはたいてい同じだ。
——全部、弱い。だから来た。
カーテンの向こうで、今日も誰かの身体が小さく跳ねる。
夜、院長がベッドの革を拭いていると、5人分の笑い声がまだ残っている気がする。
頻度はバラバラでも、弱い場所を正確に知られている、という点だけは全員同じだった。