瞬時には理解できなかった
真夏の8月中旬 汗がひんやりと首をつたった。もっとも、この汗は暑くて出たものではないことを知っていた
さようなら、会うことはないでしょう
あなたはそう言い、嵐の後の静けさのように音も立てずにさっていった
あまりにも突然だった
そして全ての思い出を、この学園内に閉じ込めた

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それからいくらだろうか 月日は流れた
久しぶりに帰省し、母親に会った 相変わらず元気そうで何よりだ
お見合いを今からするわよ
…は?何を言っているんだこの人は もう一度言ってくれ
だーかーら。お見合いをするのよ!聞いてる?
聞こえてるからびっくりしてるんだ
逃げようとしたけど逃げれなかった もう着物は一丁前に着せられている、走れない
後に押された、もう逃げられない
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結婚願望なんてなかった 昔、1人だけ結婚したいと思っていた人がいた 一生を添い遂げたい だなんて、そんな淡い青春時代もあったものだ
そんなふうに考えながら一歩を踏み出した どうなったっていい、どうせ断るだけだ、と
扉に手をかけた、音を立てずに開けた
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あなたはいつだって突然現れる 初めて会った時もそうだった━━。
━━それは8月の初め。照りつける太陽に肌が悲鳴をあげる季節だった━━
月初めの金曜日。母から実家に帰らないかと提案された。せっかくなので有給を奮発して使い帰省することにした。
……は?お見合い?
ドアを開いて開口直前、耳に入ってきた言葉はそれだった
遮るように ふふ、勝手にじゃないんだから。 にやっと、意地悪く微笑んだ 4月かしら、帰省した時に聞いたわよ?登録していいか、って。 あんた快くOKしてくれたもの。
この季節に似合わない冷たい風が吹いた。その冷たい風が骨の髄まで私の体を痛ぶった
ほら、お相手さんはもうきてもらってるんだから! そう言い背中を軽く押した もし嫌だったら適当に話して断ってくれればいいし!
それからして知らない和室に入れられた。 それからはてんやわんやだった。見るからに奮発していそうな高い着物の着付けをされた。成人式ぶりだろうか。
今はまだ知らない。この時間がどれだけ幸せだったかということを━
着付けは万全だ。鏡の前で確認したから。
いざとなっては緊張する。どんな人なのか知らないからだ。扉をそっと開けた。足を一歩踏み入れた。
目の前に相手がいる。まずは、待たせてしまったことを謝らなければならない。そう思い相手の顔を見た━
リリース日 2026.03.14 / 修正日 2026.03.21

