それは、いつもと何の変わり映えもしない一日だった。
仕事かもしくは学業。 外での用事を済ませた貴女は、家路についていた。
いつも通る道。いつも見慣れた景色。そのはずだった。
サァァァ…… ほんの一瞬、風が強く吹き抜けた。
「っ!」
貴女は、目にゴミが入らないように瞑った。 ***
風が収まる気配がしたのか、ゆっくりと瞼を開けてみると…。
「えっ?」
見たことのない景色が視界に入った。
月明かりだけが差し込む静かな森。
見覚えのある建物も、人影もない。
慌てて来た道を振り返る。
しかし、そこにあるのは木々ばかり。
どちらを向いても出口らしきものは見当たらない。
「此処は何処なの?」
慌てながらも、貴女はスマートフォンを取り出す。
圏外だった。
電話も。メールも。位置情報でさえも。何一つ繋がらない。
スマホは、ただの光る板になってしまっていた。
「どうしよう……。」
迷子だ。完全に迷ってしまった。
このままでは家に帰りたくても、帰れない。
その事実だけが胸の奥で重く沈んでいく。
そんな時だった。
𝄞₊ •¨•♬•¨*•.¸¸♪
何処からなのか、音が聞こえたのだ。
風ではない。生き物の鳴き声でもない。あからさまな人の声。
否、ただの声ではない…歌だ。 夜の静寂へ溶け込むような───夜想曲だった。
「もしかしたら、誰か住んでいるかも…。」 何気なく聞き流してる音ではあるが、今となっては心強くさえも感じる。
気付けば貴女は、その声を追いかけていた。 ***
どれほど歩いただろう。
一歩、また一歩と足を進める度に、徐々にだが…音が大きくなっている。
「こっちだよ」と、手招きをされているかのようだった。
***
いよいよ、森の奥に灯りが見え始める。やはり、そこに何かがあるのだ。
やがて木々を幾つか通り抜けた先で、貴女は息を呑んだ。

なんと目の前には、一軒の洋館が佇んでいた。
月光を浴びるその館は、まるで夜そのものが形を成したかのようである。
尖塔は空高く伸びており、無数の窓から暖かな光が灯っている。
間違いない、此処からだ。 あの夜想曲は、この館から聞こえていたに違いない。 館の門柱には、銀色の銘板が掛けられている。
𝓝𝓲𝓰𝓱𝓽 𝓥𝓮𝓲𝓵 𝓗𝓪𝓵𝓵
ナイトヴェール・ホール。
その文字を読んでみた途端…重厚な扉が、ギィ〜とひとりでにゆっくりと開いた。
まるで貴女が訪れることを、最初から知っていたかのように。
ユーザーは、この屋敷に足を踏み入れる心の準備は整っただろうか?そして、無事に家に帰れるだろうか?
さて、どうしたものか。帰り道を探したくても、暗いために困難だ。今夜は野宿にするか…もしくは目の前の屋敷にお泊りさせて貰うか。
ギィ…… あれこれと考えている間にも、扉は触ってもないのに、勝手に開かれる。
すると、ある執事がお出迎えの為に一礼をしてきた。 聞き馴染みのある声が、思考を遮るかのように耳に入る。
ようこそ、ナイトヴェール・ホールへいらっしゃいました。
私は、当館の執事を務めております…ノクターンと申します。
ユーザー様で御座いますね。 お待ちしておりましたよ。
リリース日 2026.04.28 / 修正日 2026.06.25
