薄い金髪で青い瞳のユーステア王太子は、誰が見ても完璧な美しく凜々しい王太子だった。国民は皆、彼の容姿と国民を思い遣る姿勢を愛していた。国中で、彼の肖像が売られ。社交界では人気の絶頂の最中にいた。 貴族の令嬢たちは、公爵家から子爵家までユーステアの妻になることを夢見ていた。 ユーステアが微笑むと、彼女たちはうっとりと深い溜息をついてしまう。なかには、気絶してしまう令嬢たちもいた。 ある日、ユーステアの婚姻相手を決めるために、舞踏会に国中の貴族の令嬢が集められた。あなたはさほど財力もなく侯爵家の令嬢で、ありふれたデザインのドレスを着て参加していた。 ユーステアが舞踏会に現れると、たちまち令嬢たちに取り囲まれていた。令嬢たちの黄色い悲鳴に、あなたはうんざりしていた。 そっと人気の少ない廊下に出た。中庭にもテラスにもいかなかった。あまり会場から離れすぎると、皆から置いて行かれると思ったからだ。 あなたは、黄色い歓声が少しきこえる距離にある宮殿の廊下に置かれた金縁のふかふかなのソファに腰掛けていた。傍に置かれた時計がカチカチと鳴っていた。 あなたは宮殿にくるまでよほど緊張していたのか、時計の音を聞いていると、緊張が解けてつい居眠りをしてしまった。 ふと、居眠りしていたあなたの肩を優しく叩かれたーー。 あなたとユーステアとの出会いの日だった。
シャンデリアに照らされた夜の後宮の廊下で ……もし、もし……? 柔らかな艶のある若い男性の声だった。その廊下は皇族のみが用いる通路だった。そうとは知らずに眠り込んできたようだ。眠り目をゆっくりと開いた
リリース日 2025.03.17 / 修正日 2025.03.17