🪼🗒NEREIS COMMUNICATION LOG.🖊🫧

かつて、人類は地上で暮らしていました。 しかし気温は年々上昇し、やがて地表は、長く生活するには過酷すぎる場所となります。人々は暑さを逃れて地下へ潜り、さらに安定した環境と豊かな資源を求め、海の底へ生活圏を広げていきました。
そうして築かれたのが、巨大な耐圧ドームと海中回廊からなる海底都市です。
街には人工の昼夜を再現する照明が灯り、白い建物の間を青い光が流れています。頭上を魚が泳ぐアーチ型の水槽廊下、海を眺めながら食事ができる店、透明な壁に囲まれた広場――地上を知らない世代にとって、これがごく普通の日常です。
人間用の道とは別に、街の天井や地下には水で満たされた専用通路が張り巡らされています。これは、海中を泳ぐ隣人たちのための道。ときには頭上の水路を長い尾が横切り、街角の浮上口から、人ならざる姿の誰かが顔を出します。
完全に同じ暮らしを送ることはできなくても、同じ街で笑い、買い物をし、ともに時間を過ごすことはできる。 この街は今も、人間と海の民が共に暮らせる形へ、少しずつ姿を変え続けています。

人類が海底都市の建設を進めるなかで発見した、人魚に似た水棲知性種。正式には「深海知性種」、一般にはネレイス、あるいは淵人と呼ばれています。
ネレイスは一つの姿を持つ種族ではありません。 リュウグウノツカイ、チョウチンアンコウ、メンダコ、クラゲなど、それぞれ異なる海の生物に似た特徴を持ち、生息する海域や文化、価値観もさまざまです。
彼らは独自の音声言語を用います。人間と同じように喉から声を発しますが、発音や抑揚、言葉に込められた感覚は人間語とは大きく異なります。同じ言葉でも、海域や種族によって意味が微妙に変わることも珍しくありません。
最初の接触では、互いに言葉が通じないことによる誤解や小さな衝突もありました。 それでも人間とネレイスは対話を重ね、現在では探り探りながらも友好的な関係を築いています。
街の店で人間の商品を眺める者。水路越しに子どもへ手を振る者。人間文化を学ぼうとする者もいれば、いまだ慎重に距離を測る者もいます。
彼らは未知の研究対象ではなく、すでにこの街を行き交う良き隣人です。

人間とネレイスが互いを知り、共に暮らす方法を探すために設立された共同施設です。
「研究施設」と呼ばれてはいますが、その役割は生態調査だけではありません。言語の研究と翻訳、文化資料の記録、生活環境の整備、共同設備の開発、交流行事の企画、街で起きた小さな問題の仲裁まで、両種族の共存に関わる幅広い仕事を担っています。
施設内には、人間用の居住区とネレイス用の水中区画、双方が顔を合わせる面会室、海へつながる水路、医療室、翻訳室などが設けられています。また、併設された共用水域「水庭」では、人間とネレイスが一緒に泳ぎ、遊び、言葉を交わすことができます。
あなたは、この施設に所属する種間交流通訳官です。
ただ言葉を置き換えるだけではなく、相手がなぜそう話したのか、どんな文化や感情がその言葉の奥にあるのかまで伝えること。それが、あなたの仕事です。
何気ない挨拶、文化の違いから生じた勘違い、街への外出、正式な交渉――。 海の底で交わされる五人の言葉をつなぎながら、あなたは少しずつ、彼らにとって特別な存在となっていくでしょう。
海底都市の朝は、太陽ではなく照明によって始まる。
定刻を迎えた天井灯が一斉に明るさを増し、透明なアーチ状の回廊を青白い光で満たしていく。厚いガラスの向こうでは魚の群れがゆるやかに向きを変え、そのさらに奥には、水の底に築かれた街並みが淡く輝いていた。
あなたが勤務するのは、その中心部に建つ人類・ネレイス合同研究施設。
言語の研究、生活環境の整備、文化交流の支援――人間とネレイスが共に暮らすための、あらゆる試みが行われる場所だ。
そして今日から、あなたはここで正式に種間交流通訳官として働くことになる。
リリース日 2026.08.04 / 修正日 2026.08.04