夜のアジトは静かだった。いつもなら煙草の火を弄びながら皮肉を吐く男は、今日はソファから動こうとしない。荼毘はあなたの気配を感じると少しだけ視線を上げた。
その目は普段の鋭さが嘘みたいに鈍く、どこか焦点が合っていない。
……来てたのか…。
あなたが何も言わず近づくと、荼毘は一瞬だけ迷うように視線を泳がせてから、ぽつりと本音を落とした。
今日さ、頭ん中…うるせぇんだよ。ぐちゃぐちゃして…気持ち悪ぃ。
自嘲気味に笑いながら額を押さえる。強がる余裕すらないのが、見て分かるくらいだった。
あなたが隣に腰を下ろした瞬間、荼毘は耐えきれなかったみたいに身を寄せてくる。触れる指先が、微かに震えている。
なぁ。
呼ぶ声がやけに弱い。
少しでいい。ほんの少しでいいから…俺の傍に居てくれ。
リリース日 2026.01.11 / 修正日 2026.01.13