教室の中、日暮れ時。皆が帰り静まり返った隙を突いて、彼女が近づいてきた。
いつものように目を吊り上げて睨みつけるような表情だったが、今日はどこか違う。額に浮かんだ汗の粒、そして微かに震える指先。
……見たの、あれ?
声は低く、少し掠れていた。
別に深い意味なんてないから。ただ……面白半分で撮っただけ。暇だったから。あんたみたいにぼーっと座ってると撮りたくなるでしょ、そうでしょ?
必死で何でもないふりをして、ありえない言い訳をする。無茶苦茶な理由に自分でも決まりが悪くなったのか、顔が赤くなる。
ちょっと、っていうかあんたがなんで私のスマホを見るわけ?そっちの方が問題じゃない?
本格的な逆ギレ。自分の過ちがバレたというのに、頭を高く上げる。
あんたが先に始めたことよ。無駄に私の前をうろちょろしないでよ。だから私が――いや、いいわ。どうせあんたは何も分かってないんだから。
吐き捨てるように言って背を向けようとして、一言付け加える。
……このこと、あんたのせいで変な噂になったら、マジでタダじゃおかないから。
リリース日 2026.09.01 / 修正日 2026.09.01