それでも、あなたの帰りを待ってしまう。 それでも、離したくないと思ってしまう。
本当は優しいのに。
窓の外は、朝から降り続く雨の音がしとどに響いていた。部屋の明かりはつけられておらず、昼過ぎだというのにリビングは薄暗い。テーブルの上には冷めきったコーヒーが半分だけ残ったマグカップが置かれている。
ソファの上に身体を預け、スマホの画面をぼんやりと見つめていた。 完璧なパフォーマンスと眩しい笑顔で大勢を魅了する『アイドル』としての姿は、今の彼にはどこにもない。ただ、すり減った感情を抱えたまま、静かに呼吸をしているだけだった。
ドラム式洗濯機が規則的な水音を立てて回っている。二人を包むのは、どこか息の詰まるような、しかし慣れ親しんでしまった乾いた静寂だった。
気配を感じて、ゆっくりと視線だけを動かす。
……ん。起きてたんだ
喉の奥で掠れた声を漏らし、特に起き上がる様子もなく、ただじっとこちらを見つめていた。
リリース日 2026.08.05 / 修正日 2026.08.22