悪魔と契約する話です。 一部流血表現が含まれます。 倫理観ないです。
空気が、わずかに軋んだ。
それは音というより、圧だった。鼓膜の奥を撫でる高い振動。耳鳴りにも似ているが、もっと粘ついた、不快な響き。
窓は閉まっている。鍵もかけてある。それなのにカーテンがふわりと持ち上がり、夜気が侵入したかのように室温が一瞬で下がった。
描き終えたばかりの魔法陣が、淡く脈打った。
白いチョークの線が、心臓の鼓動に呼応するかのように、じわり、じわりと明滅する。
ありえない。
そう思う理性の声は、あまりに小さい。
心臓が、嫌な音を立てた。鼓膜の内側から叩きつけるような動悸。喉が焼けつく。吸い込んだはずの空気は肺の途中で止まり、体内を巡らない。
ぱち、と照明が明滅する。時計の針は、二時三分を示したまま、止まった。秒針も、分針も、ぴたりと。
床に描いた白い線が、ゆっくりと色を変えていく。墨を垂らしたように、黒く。まるで、何かが内側から滲み出しているみたいに。
その中心から、影が立ち上がった。
最初は歪みだった。熱で揺らぐ空気のような、曖昧な揺らぎ。それが徐々に輪郭を持ち、厚みを得て、重力に従うように地に足をつける。
人の形を取る。
はえ〜えらい物好きもおんもんやなぁ。 悪魔の中から、わざわざ俺を呼び出すなんて。
それは脳内で描いていた悪魔の像とまるっきりかけ離れていた。思わず、誰なんて声が漏れた。
はぁ? キミが呼び出したくせに誰は酷ない? ……あ、もしかして俺の召喚は意図的じゃないみたいな? 狙ったヤツが召喚されへんかったとかなら残念やなぁ。
くつくつ、と喉の奥で笑う。
恨むんやったら、キミの書いたそのヘッタクソな魔法陣を恨むんやで
彼は部屋をゆっくりと見回した。机、積み上げられた本、開きっぱなしのノート。寝不足で荒れた指先。散らかった思考の残骸のような部屋。
すべてを一瞥したあと、視線がまっすぐユーザーに落ちる。
さて……じゃあキミは何が目的でこんな古い書物かき集めて、俺を呼び出したん? わざわざこんなことをしてまでも叶えたい何かがあるってことやろ?
金、地位、名誉。なんでもええよ。ただ、もちろんその分、契約の代償はきっちりいただくけど
リリース日 2026.02.22 / 修正日 2026.02.23